「短歌の目」8月 感想と振り返り ジャワ・くきやか
管理人の卯野抹茶さん、いつもありがとうございます。
8月の歌の感想ですが、今回はお題ごとに何首かピックアップすることにしました。ついでに自作も振り返ったりしてます。完遂できるかわかりませんが、よろしくお願いします。
1.ジャワ
ジャワ。いきなり難易度高かったです。アプローチ法としては、①素直に(?)ジャワ島に関する歌を読む、②オノマトペとして扱う、③まったく別の単語やフレーズに分解、あるいは入れ込む、の3パターンがありました(②は③に含まれるかな)。①の場合、思いつくのはジャワ島、ジャワ原人、ジャワカレーなど。あとはジャワティー、ジャワ更紗を読んだ方もいらっしゃいましたね。
ヒトにまで進化できず消えてった
ジャワ原人その名を刻む
〇カモノハシさんの歌。ジャワ原人までは思いついても、それをどう詠むかというのは難題だと思うのですが、悠久の時を感じる歌を作ってくださいました。ジャワ原人って呼び方、よく考えたら変ですよね。ジャワや北京だけに原人がいたわけじゃないのに、たまたま後世のその地で見つかったから、その地名が冠されている。その時代はジャワなんて名前もなかったのに。そんな可笑しさも感じました。
ジャワ遠くジャングルもないこの国の、夏の仕事にいのち削って
〇roland29さんの歌。題材にジャワそのものを選んで、しっかり一首を作り上げてるのがよいなと思いました。ジャワ、ジャングルと頭韻を踏んでいて、ジャワと「この国」(日本)が対比されている。結句を「いのち削って」で終わっているのが、引き締まっていてなおかつ、余韻を感じます。自分の状況を嘆いているようにもみえるし、その生き方にプライドをもっているようにもみえる。シンプルに見えて味わい深い歌だと思います。
「短歌の目」第6回 8月 / 愚かに青く愛してた - みかづきいろ(仮)
テーブルのリネンに島を描きたるジャワティーの染み南の絵地図
〇桜井朔咲さんの歌。一読して何とも美しいイメージが頭に浮かぶ歌です。テーブルのリネンやジャワティーといったモチーフがおのずと南の島を呼びよせているような。
いつまでも子供じゃないと強がって一匙食べたジャワの辛さよ
〇昌平橋さんの歌。私の歌と発想が似ていたのでピックアップさせていただきました(笑)。ちなみに私のは
"ジャワカレー オトナのカレーと食べぬまま大人になってもバーモント派"
どちらも、ジャワカレー=辛い、大人のカレーというイメージから作られた歌ですね。私のはちょっと言葉の流れがいまいち。。。昌平橋さんのは、流れがよく読みやすくて、「一匙」といった単語も効いてるなと思います。
2.くきやか
くきやかに点から円へ咲く花の音は半秒遅れて届く
〇うささんの歌。うまい!の一言。こう、花火が上がって開いて音が届く、その時系列に沿って詠まれているのですよね。だから、するすると頭にそのイメージが思い浮かぶ。そして初句の「くきやかに」という言葉がさらにそのイメージを鮮やかに、華やかにしている気がします。
「短歌の目」第6回 8月 / 愚かに青く愛してた - みかづきいろ(仮)
くきやかに青のカンバス縁取りて積乱雲の毛羽立っていく
〇桜井朔咲さんの歌。ご自身の振り返りを読ませていただきました。「夏の真っ青な空に浮かぶくっきりとした白い雲」を詠みたかったとのこと。その思いがまっすぐに伝わってくる歌でした。詠みたいと思ったものを思った通りに詠めるかというと、なかなか難しいのですよね。それがうまくいけばうれしいし、うまくいかないともどかしい。そういう意味で、うらやましいとも思いました。
ここで、自作を振り返りたいと思います。
"青空に白いひとがた くきやかに浮かんでただよう影おくり日和"
「くきやかに」というお題から、「かげおくり」の歌を詠みたいと思いついて作りました。「かげおくり」というのは、『ちいちゃんのかげおくり』という絵本にでてくる遊び。よく晴れた日に地面に映った自分の影を瞬きせず10秒間見つめ、そのままぱっと青空を仰ぐと、自分の影の残像が青空に白く浮かび上がるというものです。この話は小学校の国語の教科書に載っていたので、知っている人もいるかもしれません。
くきやかさのイメージとしては、桜井さんの歌の「青空に白い雲」のコントラストにも似ていると思うんです。でも私の歌は、いまいちくきやかさに欠ける。何でかなーと振り返ってみると、焦点がぼやけているのですね。「かげおくり」を知らない人のことを意識して、説明的になりすぎているのかもしれません。あと、「影おくり日和」というフレーズ。自分的には気に入っているんですが、読んだ人にそのフレーズだけで何か伝わるかというと、うーんという感じです。
やはり短歌は、31文字にどう情報を詰め込むか、ではなく、どう切り取ってその世界を伝えるか、なんだなと思います。そのためには文体も大事で。桜井さんの歌の場合は、「縁取りて」「毛羽立っていく」というきっぱりした口調が、くきやかな青と白のコントラストにふさわしい効果をだしています。ただ言葉を連ねるのではなく、そういったことも意識していきたいと思いました。
烈日に街くきやかになる前の僅かな時間に駅まで行きたい
〇昌平橋さんの歌。夜明けの薄ぼんやりとした状態から、日が高くなるにつれて街がくきやかになる。その発想が面白いと思いました。そしてそれまでに「駅まで行きたい」という現実的な願望が最後に来るのがおかしかったです。
お題2つしか消化できていませんが、ひとまず今回はこのへんで。続きは…書きたいと思ってます…(弱気)。