緋綸子の雑記帳

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『進撃の巨人』18巻 第71話感想

 『進撃の巨人』18巻の感想です。と言いたいところですが、なぜか第71話のみ。もっとまとめて書きたいのですが、一話一話の中身が濃くてですね…(そうやっていつも中途半端に終わる)。ということで第71話の感想ですが、18巻収録分(第74話まで)の内容にも少し言及してます。 

 

 

第71話 「傍観者」

 

前巻から考えて、キース教官がグリシャに何かを託されていてエレンが二人の思いを知る…といった展開を想像してましたが、かなり違いましたね。まさかあのキース教官がこんなにこじらせた方だったとは…。教え子である104期生たちもショックでしょう。でも、教官としてはとても優れた方だったと思うんですよね。104期生ひとりひとりの性格や能力をしっかり把握してましたし。団長やってた頃の周りが見えていない彼とはちがいますよね。誰かそのへんフォローしてあげて!と思ったけど、まぁそんな状況でもないわな。

104期生以上にショックを受けて怒りを隠せなかったのがハンジさん。彼女は普段は明るくおちゃらけてるように見えるけど、芯の部分では誰よりも調査兵団の理念を心から信じてる熱い人だよなぁ。このまっすぐさはちょっと心配になるくらい。

 

キースが語る、キースとグリシャとカルラの関係。グリシャは自分の名前と医師であるということ以外の記憶を喪失した状態で壁外にいた。72話以降で語られるけど、グリシャは壁外から来た人間であるということですね。記憶を喪失したというよりは、壁内のことを何も知らないし、まさか壁外から来たなんて言えないからそういうことにしたって感じでしょうか。そして駐屯兵団のよっぱらい兵士、ハンネスさん。ああ、こうやって回想に出てきてくれるだけでもうれしい。ハンネスさんのグリシャへの処置は、いいかげんだけど情のあるやり方で、ほんとハンネスさんらしいと思う。

グリシャはキースに、この世界のことをいろいろ教えてほしい、と言い、二人は会うようになる。二人が食事をした酒場で働いていたのがカルラさん。酒場はこの世界の出会いの場なんですねw  で、このときのカルラさんが美人!で、エレンそっくり!何かこう、エレンが女の子になったみたいで、萌えてしまいました。そしてまた、カルラの言動が生意気な感じでますますエレンみたいなんですよ。キースたちへのつっかかった物言いや、接客業にあるまじき雑なお盆の持ち方とか、「あらそーですか」と言うときの表情とか、エレンにしか見えない。このページだけで私はしばらく悶えていました。

このときグリシャはキースに、調査兵団は「人類の誇りそのもの」「特別な選ばれし者」と尊敬をこめて言い、キースはそれを受けて悪い方に思いあがります。周りの人間を凡人として見下し、自分が偉業を達成すれば凡人でも自分を認めるようになる、と。そしてカルラも…。こんな考え方をしてる時点でカルラと結ばれることはないよ(要はカルラのことも凡人として見下してる)、と思うけど、調査兵団が誰にも理解されず認められなかったことの裏返しなんだろうな。グリシャの言葉にすがって、プライドを保つしかなかったんだろうな…と考えるとキースさんせつない。

キースが団長になり、偉業を達成すればみんなに認められてカルラもゲットできるという思いで壁外調査に邁進していたけど、そうこうするうちにカルラはグリシャと結婚してしまい、調査のほうも失敗続きでエルヴィンという優秀な部下まで出てきて、自分が特別な人間じゃないということを思い知らされる。何かこういうの、現代のドラマとかでもありそうですよね。恋愛が成就せず仕事に没頭するけど、仕事も才能なくて行き詰まる、みたいな。

そんなとき、エレンを抱いたカルラと会い、これまで鬱積した劣等感やら嫉妬やらをカルラにぶつけてしまう。カルラを「凡人」「男に愛想を振りまき酒を注いで回るしか取り柄の無い者」と罵ってしまう。あああ、キース。こじらせここに極まれり。どうでもいいけど、愛想は振りまいてなかっただろ、と思わずつっこんでしまった。あと、赤ちゃんエレンがカルラの髪の毛つかんであぐあぐしてるのかわいかった。

 

数年後、エルヴィンに団長をゆずってキースが王都へ向かったところ、シガンシナへ巨人襲来。グリシャと偶然再会し、避難所で見つけたエレンからカルラが巨人に食われたことを知る。グリシャはエレンに「母さんの仇を討て」といい、森へ連れて行く。キースが目撃したのはそこまで。しばらくしてキースが森へ見に行ったところ、グリシャはおらずエレンが倒れており、キースはエレンを回収して寝床にもどした。そこまでの話を聞いた現在のエレン「…それだけ…ですか?」って容赦ないww たしかに、その森で何があったかが一番知りたいところだけど!しかたないよ、グリシャさん「関わらないでくれ」っていってたんだから!

そして、かつての部下であるハンジにも失望され責められるキースさん。気の毒にも感じるけど、わざと責められるような話し方をしたんだろうな、きっと。自責の念から、自分の幼稚な思いをさらけ出さずにおれなかったんだと思う。カルラさんへの恋心とかどの程度わかるように話したんだろうか。まあ、あからさまには言わなくてもみんな察するよね。エレンは察しないかもしれないけど。まぁ、エレンは察しなくていいよ…、息子だし。

でも、「自分は特別な人間じゃない」という思いにとらわれているのは、エレンも同じだった。そこへ、キースがカルラの思いを伝える。特別じゃなくていい、と。

「だからこの子はもう偉いんです この世界に生まれて来てくれたんだから」

青空を背景にカルラの言葉を反芻するエレンの表情がよいです。あのときのキースの罵りが、ここにつながるとは…。この構成が素晴らしい。そしてまさか、キース教官から、グリシャではなくカルラの思いを聞くことになるとは。あいかわらず予想を裏切ってくれますね、諫山先生。

そして、訓練兵時代の立体機動装置の試験の、ベルト壊れてた事件の真相が明らかに。カルラの思いを知っていた教官が、エレンを調査兵団に行かせまいと仕組んだことだった…。エレンが間違いなく、カルラの子であり、グリシャの子でもあるということを、ひしひしと感じた一話でした。