緋綸子の雑記帳

私が誰かのブログを読んで楽しむように、見知らぬ誰かが私の記事を読んでくれたら。

『十四歳のエンゲージ』 谷村志穂

特別お題「青春の一冊」 with P+D MAGAZINE
http://blog.hatena.ne.jp/-/campaign/pdmagazine

 

私にとっての青春の一冊ということで思い浮かんだのがこれ。ちょうどこの本に出会ったのが14歳のころだったこともあって、主人公のタエコと自分を重ねて何度も何度も読んだ。読んでいて一緒に心が傷だらけになるし、一見救いようのない結末を迎えるんだけど、不思議とそれで心が救われるというか、温かい光のようなものが残る。

谷村志穂というと恋愛小説を思い浮かべる人が多いと思うんだけど、『十四歳のエンゲージ』は恋愛小説ではない。主人公・タエコは中学生の女の子で、不良グループに所属している。ちなみに、CAROLやCOOLSといったバンド名が出てくるから、舞台は70年代か80年代だろうか。不良グループに属しているといっても、タエコは全く不良になりきれていない。もともとはごく普通のあたたかい家庭で育ってきた「いい子」なのだけど、周囲の普通の女の子たちと群れるのが嫌で、大人に見える不良たちに憧れて、グループに入ったのだ。けれど、普通の女の子たちともうまく馴染めないタエコが、不良グループでうまく立ち回れるはずもなく、結局グループ内でも浮いてしまう。この、いい子コンプレックスで人の輪の中に入るのが苦手なところが自分を見ているようで、私はどっぷり感情移入してしまったのだった。

タエコが不良グループに入った理由はもう一つあって、ルーという少女がそこにいたからだ。ルーはシンナーやってるような筋金入りの不良なんだけど、学校では明るく活発で、不良・一般生徒問わず友達がいる。けれど、家庭は荒んでいて、家には親がほとんど帰ってこず、孤独でふさぎこんでいる。そんなルーを救いたいとタエコは思うのだけど、14歳の自分には何もできないことを知っている。ルーはいつもタエコの気持ちを明るくしてくれるのに、自分はルーがふさぎこんでいるとき、そんなふうに気持ちを軽くしてあげることができない。タエコは、一方的にルーに依存しているような自分とルーの関係をなさけなく思う。

不良グループどうしの抗争やヤクザとの関係の中で、ルーはタエコの知らないうちにどんどん痛めつけられていく。タエコは結局そんなルーを救うことができずに物語は終わる。この本を読んでいると、タエコのルーへの思いが自分にも染みとおってくるようで、ルーというシンナー中毒の不良少女が、温かい光に包まれた神聖なもののように思えてくるから不思議だ。