緋綸子の雑記帳

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単なるイケメンキャラにとどまらない、成長した黄瀬涼太

黄瀬君の魅力について、最近のコミックスを読み返しながらつらつら考えている。ウインターカップでの黄瀬君はもう、文句なく本当にかっこよい。

たとえば、ウインターカップの3位決定戦(海常VS.秀徳)が終わったあと、緑間が
「勝負はおあずけだ 次こそお互い全力でやろう」
と黄瀬に声をかけるんですが(この緑間のセリフも良い)、それに対し黄瀬は
「緑間っち」と一瞬感傷的な表情をしたかと思うと
「あったり前じゃないっスか!オレが出てたら勝ってたっス 絶対!」と返す。湿っぽくしないところがよいですね。かわいいし。そして、
「……ま しょーがないっスね 悔しいけど 今日のオレらは前座っス おいしい所は主役に譲るっスよ」
と言うのですが、このセリフについて考えていると、もうそれだけで何時間も経過しちゃうくらい、このセリフは素晴らしい。このときの黄瀬は、自分のオーバーワークが原因で足を痛め、3位決定戦にはまったく出場できず、チームを敗退させてしまいました。自分が出られなかったことに対する悔しさ、先輩たちに申し訳ないという自責の念でいっぱいでしょう。一方で、そういう怪我やもろもろも含めて、これが今の自分の実力だったと受け入れてもいるんだと思います。それは、誠凜との試合中に笠松先輩に言われたことでもあって。だから「しょーがないっスね」と。けれどやはり「悔しい」気持ちもあって。そして、「今日のオレらは前座っス おいしい所は主役に譲るっスよ」というのは、ひがみなどではなく、心から誠凜と洛山のことを認めているからこそ出てくるセリフなんだと思います。……うーん、これだけではこのセリフがなぜそんなにかっこよく思えるのか、説明しきれてないな。うまくいえないのですが、本当は、このときの黄瀬の胸中には抑えきれないほどの悔しさが渦巻いていると思うんです。けれど、それをそのまま表にだして緑間にぶつけるようなことはしないで、かといって完全に隠すのでもなく、さらりと本心を言ってのけるんですね。そこがかっこいい。「悔しいけど 今日のオレらは前座っス」なんて、聞きようによっては、キザったらしい感じがするのですが、そんな表面的なカッコ良さではないんですよね。ここに至るまでの、黄瀬の内面の成長がきちんと描かれているからこそ、このシーンは感慨深い。この黄瀬と緑間のシーンの素晴らしさについて、誰かと語り合いたいくらいです。とりあえず一人で語ってますが。

思えば黄瀬君は、登場した初期はイケメンでありながら、性格はあまり男前とはいえず、チャラかったり、自分より実力が下の人のことを見下していたり、「黒子っちください」と傍若無人な要求をしたり、初めて負けたことで泣いてしまったり、まあ一言でいうとちょっとガキっぽかったです。それはそれで、魅力的だったんですが。その後、笠松先輩を初めとするチームメイトやライバルとの関わりの中で内面も成長していくのですが、その過程が要所要所で描かれているのが黄瀬を好きになる理由の一つかなと思います。あと、全体的にキャラのモノローグの少ない『黒子のバスケ』にあって、黄瀬は比較的モノローグあるほうなので、考えていることが理解しやすいんですよね。番外編で主役になったし。

黄瀬のモノローグでひとつ、好きなのがありまして、海常バスケ部入部当時、笠松先輩から説教されたときに
「イバってるだけじゃないのはわかったけど 納得したわけでもなかった ただなんとなく海常の黄瀬ってのは気に入った」
というものなんですけど、ここに黄瀬の性質がよく現れてるなーと思って。黄瀬は、勉強の成績はよくないけど頭が悪いわけじゃなくって、人の言っていることも理解はできるんだけど、言葉だけでは納得しないんですよね。だから、笠松先輩の説教にしても、黒子の言葉にしても、初めは反発していたりする。ただ、その言葉はちゃんと頭のどこかに忘れずに残っていて、経験を通して初めて「そういう意味だったのか」と納得する。こういうところが面白いです。そして、「なんとなく海常の黄瀬ってのは気に入った」っていう感性的なところもいいです。

何かもう、黄瀬について語っていたらキリがないですが。とにかく
「最高の選手です 海常の黄瀬君は」