緋綸子の雑記帳

私が誰かのブログを読んで楽しむように、見知らぬ誰かが私の記事を読んでくれたら。

九州国立博物館の北斎展と太宰府散歩

先日、九州国立博物館北斎展に行ってきた。今週末の6月12日で展示は終わってしまうので、ギリギリすぎてこの記事を参考にしてねというタイミングでもないけど、楽しかったのでレポートをば。

今回の展示の目玉は日新除魔図という、北斎がほぼ一年毎日厄除けのために描いてた獅子の絵で、特に頼まれたものでも誰かに見せるつもりのものでもなく、描いてはそのへんに放ってたらしい。その後、北斎は信州松代藩士の宮本慎助に何かの絵を頼まれてたんだけど、しばらくして再会してもその絵がまだできていなくて、お詫びとして娘の応為(阿英)がその獅子図を贈って宮本氏は喜んで受け取った、と。このエピソード自体が粋で物語みたい。阿英がちゃんと保管しておいて、それが宮本家に渡ったからこそ、こうやって現代まで残っていると思うと奇跡のようだ。

 

日新除魔図は一部のものを除いて撮影可だった(フラッシュは不可)

獅子がユーモラスでかわいい。毎日描いているのにポーズも構図も日々違うし、いろんな面白いアイデアが盛り込まれている。個人的な落書きだから肩の力が抜けた感じで筆の勢いがあって、でもめちゃんこ上手い。こんなに自由自在に描けたら楽しいだろうなと思った。日新除魔図のコーナーは写真が撮れるからお気に入りのをいくつか撮ったのだけど、結局図録も買ってしまった。

あと今回の北斎展で一番好きだったのは狐狸図。歳月を経て老成した雰囲気の僧衣の狐と狸がよい。なんかちょっとしょぼくれた感じがたまらん。背景にも幽玄を感じる。一方で小道具の罠と茶釜はディテールまでしっかり描かれててこの絵だけで現代に再現できそうな感じで面白い。図録があれば、見たいときに狐狸図を眺められるのでやはり買ってよかった。

六歌仙図もよかったな。縦長の紙に六歌仙が上からジグザグに配置されている。それぞれの人物の顔の向きや表情、ポーズも含め、構図がばっちり決まっていて、漫画のキャラ勢ぞろいの扉絵みたい。

そして、最後の出口付近に展示された、巨大な龍と鳳凰の天井絵がすごかった。この北斎展のことを弟にも勧めていて、私より後に弟も行ったんだけど、感想を聞いたらこの龍が可愛かったと言っていて「つのがない」と言っていた。そうだったっけ?と思って図録を確認したら、たしかに角がなくて頭がつるっぱげの人みたいになってて面白かった。北斎の絵、獅子にしても龍にしても顔がユーモラスでかわいくて好き。鳳凰もまた独特で、赤と緑を中心とした色彩も、尾をしならせて全身が円を描くような構図も圧倒される。これを八十代の晩年に描いたというからすごすぎる。

 

九州国立博物館には、気になる特別展があったときに何度か来ているのだけど、太宰府天満宮と繋がっていて帰り道に通るので、そのたび天満宮にお参りすることになる。そして参道をぶらぶら歩いて駅に行くというお定まりのコース。

今回は、やす武というお店でよもぎ梅ヶ枝餅を焼いているところがめちゃくちゃおいしそうだったので一つ買ってみた。焼きたてのあつあつで本当においしかった。

同じく参道にある梅園という老舗の菓子屋さんは、なかなか他では見ないようなお菓子を売っていて、店内や店員さんの雰囲気もよくて、何度か来たことがあるお気に入りのお店。「宝満山」というお菓子が名物なんだけど、宝満山を干菓子にして切ってある、「よろつよ」も好き。今回はすぐ売り切れてしまうというラムレーズンの「よろつよ」をお勧めされたので買った。さくっとも、ふわっとも違う、その中間のような食感で、しっかり甘くて、それでいてしつこくなくておいしい。今回は太宰府出身の木彫の芸術家の作品(菅公像と万葉佳人の像)を店の奥に飾ってあって、それについて店員さんがお話ししてくださってうれしかった。あたたかみがあって木の風合いの美しい木彫だった。梅園さんのインスタを見ると、この像も6/12までの展示なのかな?見られて運がよかったんだな。(baienwagshiというアカウントでインスタをされていて、木彫の写真も見れます。インスタ、まめにアップされていてすごい)