緋綸子の雑記帳

私が誰かのブログを読んで楽しむように、見知らぬ誰かが私の記事を読んでくれたら。

5月の「短歌の目」感想 その2

6月になってしまいましたが、5月の「短歌の目」感想の続きです。

tankanome.hateblo.jp

 

 

 

 

baumkuchen.hatenablog.jp

 

1. うぐいす 

 ささくれた縁側に頬寄せる午後 うぐいすあんのパンの白さよ

 

懐かしい、記憶の一風景を詠んだ歌。作者の振り返りによると、おばあさんの家での思い出だそうです。縁側に寝そべってパンを食べるのどかな風景。おそらく日が当たって暖かいであろうその場所に、うぐいすパンの白さ。読んでるこちらも、ほの温かい気分になります。「うぐいす」のお題は私が出させていただいたのですが、狙いどおり、うぐいす嬢やうぐいすあんなど、鳥以外で詠んでくださった方が何人かいらっしゃってうれしかったです。

 

3. 並ぶ 

 畳まれた傘はつぼみ 雨の日に咲くのを夢見て立てられ並ぶ

 

傘を花に見立てた歌。色とりどりの傘たちは、つぼみとして並んでいるのも、雨の中開いているのもきれい。

 

 

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2. 窓 

窓際に 頭並べて鰯たち 同じほう見て 腐り始めた 

 

3. 並ぶ 

艶々と浮いては並ぶ 豆腐ほど そっと触れたり 幼い人よ

 

9. 茜さす 

茜さす 李小龍( リーシャオロン )の  頬に散る 復讐の跡 映えて哀しき

 

好きな歌が多かったのですが、にもかかわらず感想が難しく、とりあえず並べてみました。いずれの歌も的確な言葉で対象を描写されていて、「艶々と浮いては並ぶ豆腐」など、光景が目に見えるようで、描写そのもので感動を呼び起こせるのだなぁと思いました。

「茜さす」は「復讐の跡」にかかるのでしょうか。血の匂いを思わせます。「茜さす」の歌は、これ以上ないくらいばしっと決まっていて、いかにも映画的でかっこいいです。

 

 

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4. 水

畑に畝、田に水が張りようやっと深呼吸する北国のはる


田んぼに水が張ると、生き返ったように美しく輝きますよね。それを、「ようやっと深呼吸する」と表現しているのがよいなと思いました。

 

5. 海

海に棲むものは海などみずに生きわたしはすべてをみつめて生きる

 

海に棲んでいるものは海をみていないということに、言われてはっと気づきました。一方、わたしはすべてをみつめている。海も空も自分をとりまく世界も自分自身も。それぞれが、そうあるように生きている。こういう哲学的なことが言えるのも、短歌の面白いところですね。

 

 

zeromoon0.hatenablog.jp

10.虹

虹色の水たまりを踏みつける 錆びの匂いが僕らのふるさと

 

「錆の匂いが僕らのふるさと」ということは、何となく工業地帯的なイメージ?ということは、「虹色の水たまり」は、アスファルトの上の、油が混じって虹色に輝く水たまりのことでしょうか。そんな水たまりを「踏みつけ」て、「僕らのふるさと」と言い切る、やんちゃな少年たち。現実の工業地帯なのかもしれないし、近未来SFのようなイメージもあります。

 

だいぶ予定より少なくしか書けませんでしたが、5月の感想はここまでで終わりとさせていただきます。皆様、ありがとうございました。