緋綸子の雑記帳

私が誰かのブログを読んで楽しむように、見知らぬ誰かが私の記事を読んでくれたら。

『とにかくうちに帰ります』 津村記久子

嫌な人に嫌なこと言われてむしゃくしゃしたときは津村記久子の小説だ!と思って今朝出勤前に本棚をあさったのだけど、ぱっと見つかったのは『とにかくうちに帰ります』という文庫本だった。これは津村記久子の作品の中では比較的、嫌な奴出てくる度が低い。高いのは『君は永遠にそいつらより若い』や『ミュージック・ブレス・ユー‼』。『ポトスライムの舟』は嫌な奴を超えて恐ろしい。

でもよく考えれば、むしゃくしゃしているときに、嫌な奴を小説で反芻するのもどうかと思うので、この本でよかったかもしれない。

 

『とにかくうちに帰ります』には表題作を含む3つの短編が収録されていて、今朝、バスで小一時間揺られながら読んだのは 『バリローチェのフアン・カルロス・モリーナ』。面妖なタイトルだけど、アルゼンチンのバリローチェ出身のフアン・カルロス・モリーナという男子フィギュアスケート選手を主人公が応援して一喜一憂する話。録画したフィギュアスケートを見ていてふと顔の濃いその選手の演技に妙にひかれてから、テレビやネットニュースで彼の活動を追いかけるんだけど、その練習環境、キャラクター、試合成績、どれもいまいちぱっとしない。グラドルといたところをパパラッチされて、恋人兼コーチの女性との仲が危うくなったりする。そんなことが起こるたび主人公は心の中でフアン・カルロス・モリーナに悪態をつく。

面白いのは主人公と同じ職場で働いている浄之内さんという女性で、スポーツ観戦の話題などで主人公と気の合う、おっとりかつしっかりした先輩なんだけど、彼女が応援するチームや選手は壊滅的に負けたり不調に陥ったりする…という迷信めいた疑惑を主人公は密かに抱いている。それで初めはフアン・カルロス・モリーナのことを彼女に言わずにいたのだけど、あるときフィギュアの試合の録画をしそこない、浄之内さんにそれとなく話題をふったところ、録画していたばかりか、マイナーな選手であるフアン・カルロス・モリーナに関する情報を主人公より知っていて、それからは二人で応援するようになってしまう。このあたりの主人公の「ありがたいけど困ったな…」って感じの微妙な気持ちが面白い。 

津村記久子の作品のすごいところは、単に共感できる日常あるあるネタを書いてるんじゃなく、誰かの日常が本当にそこにあるかのように作り上げてしまうところだと思う。

 

表題作の『とにかくうちに帰ります』はすごくすごく大好きな作品なので、いつかちゃんと語りたい。でもたぶんこの作品の面白さ、良さは説明しただけでは伝わらない気がするので、とりあえず読んでみて、と言いたい。

忘年会

忘年会、全部が全部じゃないけど、年を忘れるどころか年末にあらたに失敗エピソードを作って嫌な気持ちを来年に持ち越すというようなことがある。今回もそうだった。会話が苦手なのは重々わかっているのだから、せめてもっと余計なことを言わずにダメな印象を残さないようにできればいいんだけど、それができないから「会話が苦手な人」なんだよな。いつまでも変わらない。

 

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短歌の目 11月

風邪ひきました。まだこちらはそんなに寒くもないのに。先が思いやられます。

 

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1.本

文庫本落とした右手 空掴みそのまま眠る赤子のように

 

2.手袋

手袋と手袋のふれあう厚み 思い出すのはそんなことなど

 

3.みぞれ

湯気のたつシチューのCM思いつつみぞれの夜道を踏みしめ歩く

 

4.狐

子狐ところげまわって遊ぶ子ら雪の向こうに消えてしまった

 

5.メリークリスマス

「ただいま」の代わりに「メリークリスマス」響かせ我が家に明かりを点す

 

テーマ詠「酒」

透明で含むと冷たくて熱い液体落ちる胸の奥底

 

「はてなブロガーに5つの質問」に回答します

はてなブログ5周年ありがとうキャンペーンお題第1弾「はてなブロガーに5つの質問」

 

1. はてなブログを始めたきっかけは何ですか?

黒子のバスケ』にハマってしまい、感想を語る場がほしかったので。

 

2.ブログ名の由来を教えて!

ひさびさのブログだったのでまずハンドルネームを考えました。あまり人とかぶらずに音の響きの気に入ったものを。ブログ名自体はあまりひねらず、黒バス感想以外も書きたくなるだろうと思い、雑記帳としました。

 

3.自分のブログで一番オススメの記事

『ルナティック雑技団』をひさびさに読んで - 緋綸子の雑記帳

 

自分で読み返してみてもけっこうおもしろかったです。あの漫画の魅力を言葉だけでなんとか表現しようと試みている…。まぁとにかく『ルナティック雑技団』面白いので是非みなさん読んでください。愛咲ルイ先輩をみんなで応援しよう。

 

4.はてなブログを書いていて良かったこと・気づいたこと

良かったことは、素敵なブログ主さんたちと知り合うことができたこと。知り合うといっても、直接お会いした方はまだいなくて、お互いに記事を読んだり、たまにコメントしたりという間柄ですが、それくらいの距離感がここちよいです。これはブログならではだなーと思います。

あとはやはり、はてな題詠「短歌の目」に参加したことで、短歌を作り、人に読んでもらい、他の人の作った短歌を読む、という貴重な経験ができていることです。管理人の卯野様、そして参加されているおなじみの皆様には本当に感謝です。おかげさまで楽しいです。

 

5.はてなブログに一言

はてなブログ5周年おめでとうございます。はてなダイアリーの方は大学生の頃から何となくその存在を知ってたのですが、はてなブログの方はそんなに新しかったのかとびっくりしました。

まだ当分お世話になると思うのでよろしくお願いします。

 

 

短歌の目 第十二回 10月 自作振り返り

急に寒くなってきました。今年春に買ったスプリングコートはおって通勤しています。

自作振り返りということで、自分の歌の背景や反省を書いておきます。

 

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1.渋

生きていくことは汚れることだってスポンジに茶渋なすりつけつつ

 

激落ちくんのおかげで圧倒的に茶渋とりは楽になったのだけど、白いスポンジのかけらがみるみる茶色になって捨てられるのを見ると、結局激落ちくんが汚れを引き受けただけで汚れが消えたわけじゃないんだよなって思う。

 

2.容

生きていることを忘れて眠る日も受容体は開かれている

 

「容」を含む単語として受容体を思いついたはいいけど、あんまりうまく活かせなかった。休日に丸一日何もせず寝ていて(そこまで疲れているというわけじゃない)、これって生きていると言えるのか?と思うことあるんだけど、寝てるだけでも汗かいて汚れるし、体の細胞は活動しているんだな、と。

 

3.テスト

この漫画たまたま買ったの覚えてる  テストの終わった午後の本屋で

 

定期テストの最終日の午後、近所の本屋で立ち読みしてるときの解放感。そうやって出会った漫画が一生の宝になったりもする。

 

4.新米

新米を抱えて帰る  スーパーで他に何にも買えなかったよ

 

車も自転車も持ってないので、あまり重たい米袋は買って帰れない。なので実際は2kgのを買っていて、片手でいけるし他の品物も買える。

 

5.野分

野分すら秋を連れてはきてくれず半袖で歩く十月の夜

 

今年は台風のあと一瞬涼しくなったかと思ったらまだしばらく暑さが続いて、夜も20度超したりと蒸し暑い日々だった。でもこの記事をアップした頃には急に寒くなっていた。

 

テーマ詠「空」

休日の職場の窓から見る空はどんな空より青くて嫌い

 

休日出勤というよりは、世の中の休日が自分の出勤日であることが多くて、行楽日和だったりすると恨めしい気分になる。でもこの歌の「どんな空より青く」の続きをどうするかはかなり悩んで、意味をとおすのと字数的に「嫌い」としてしまったんだけど、自分としてはあまりしっくりきていない。