緋綸子の雑記帳

私が誰かのブログを読んで楽しむように、見知らぬ誰かが私の記事を読んでくれたら。

日記 友人と本のはなし

 お盆休みで帰省していた中学・高校時代の友人と会った。私の格好は、黒地に花柄のロングスカートに、某地元テーマパークのTシャツにサンダル。まず駅ビルの本屋併設のカフェでお昼を食べ、互いにプライベートや仕事の近況を報告した。あとは本の話。

 本の話をするうちに、本屋を見て回りながら話そうということになった。初めはそのカフェの隣の本屋を見て回ったが、あれがない、これがないと言って、近隣の地元で一番大きい本屋に足を伸ばした。児童書コーナーを見ながら、これを読んだことあるなどと互いに報告し合う。ほとんどかぶっているものはない。なぜか私はズッコケシリーズなどの定番の児童書を読んだことがない。絵本もあまり記憶がない。『赤毛のアン』や『小公女』を愛読していた。岩波少年文庫の前でも立ち止まって話した。こんなところで人と会話するなど初めてだ。『はてしない物語』、友人は読んだそうだが、私は読んでいない。『はてしない物語』は、本自体の話でもあるので、文庫でなくハードカバーで読むのが適していると彼女は主張していた。岩波少年文庫、彼女は普通の文庫サイズだったらいいのにと言っていたが、私はこのサイズと装丁が特別感があって好きである(通常の文庫ばかり集めていると、本棚のサイズに合わなかったりするのはわかる)。

 友人は現代作家やラノベなどもけっこう読んでいて、東野圭吾の作品の話もした。私は全然読んだことがなく、それでも彼女はストーリーを説明してくれる。NHKでドラマ化されたものを見て、ここ、おかしいのでは?と疑問に思った箇所の原作を読んでみると、いくつかの短編を混ぜて、本来別作品の人物を一人のキャラクターにしたりしてドラマにしているので辻褄が合わなかったのだとわかった、という話など。その話はとても興味深かったのだけど、私はそれをさらに盛り上げるような返答はできなくて、「へぇ」と聞いていた。それでも彼女も話せて満足そうだった。こういうふうに本の話をできるのは楽しい。

 二人にとって懐かしい、コバルト文庫の話もした。中学高校の頃、彼女からコバルトの雑誌を借りたものだった。あれだけ一世を風靡したものが、本屋でほとんど見かけなくなるなんてねぇと感慨にふけった。今はもう紙媒体での新刊は出ていないらしい。若木未生先生の話になると、彼女はいまだにフレッシュに文句を言うので高校時代に戻ったみたいで楽しい。ハイスクールオーラバスターを私に貸してくれたのは彼女なのだが。結局オーラバは完結したのか?互いにあやふやであった。

 『ジョゼと虎と魚たち』の話になった。友人は映画→小説の順で、私は小説だけ読んでいる。友人は映画が非常によかったと言っていて、「映画がよかったから、小説はそれに比べるとあっさりに感じた。それもそれでよかったけど、映画を観ずにあの短編集を読んだら、そのなかでは印象の薄い作品だったと思う」と言った。私も短編集で読んだのだが、初めて読んだときはかなりインパクトがあったし、好きで何度も読んだ。それを言うと友人は驚き、どこがそんなに好きだったか聞かれたので、「なんか、エロティックで」と答えた。それはかなり感受性が強いのではないかと友人は言っていた。

 梨木香歩作品や湯本香樹実作品、『鎌倉殿の十三人』や実朝の話にもなった。私は和歌に関心があり、友人は謡に関心があることを知った。梨木香歩の小説のなかで、友人は『沼地のある森を抜けて』が一番好きと言い、今度は私が驚いた。私にとっては戸惑いを感じた作品だったからだ。梨木香歩作品としては珍しく、性的な領域に踏み込んでおり、その描写はあまり私には合わなかったのだ。友人は読み返すと理解が深まったと言っていたので、読み返してみるとまた印象が違うのかもしれない。そして友人は梨木香歩といえば『西の魔女が死んだ』が取り上げられる風潮があまり好きではないと言い、それよりも似通ったテーマなら湯本香樹実の『ポプラの秋』がよい、と言う。『ポプラの秋』は私がとても好きな作品、いわば心の本で、たしか高校生の頃にすでに読んでいたはずだ。私たち、『ポプラの秋』の話したことあったっけ?と聞くと、友人は首をかしげていた。その頃は語り合ったことはなかったのかもしれないし、どこかで軽く話題にのぼったような気もする。

 買うつもりの本を持ったまま、本屋でうろうろしたり立ち止まったりしながらずっとそんな話をしていた。ずっと立ち話もなんなので(と言い出すまでにそうとう時間がたっていたが)、本を買ってしまい、お茶をしようということになった。

 友人は吉野源三郎の『君たちはどう生きるか』を買うかどうか迷った末、たしか結局買っていた。私は友人の勧めてくれた青山美智子という作家の本を買った。そうしてその建物に入っているカフェで、あんみつとパフェを食べて別れた。