緋綸子の雑記帳

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ラインハルト好きな私の『銀河英雄伝説』読後の感想

英伝小説の本編読み終わったとき思ったのは「ラインハルト最後までよく頑張ったよ!」というものでした。正直私はスター・ウォーズのアナキンみたいな闇落ちを恐れていたので。ヴェスターラントの件を端緒にこう、ずるずると。でも違った。キルヒアイスが彼の心に宿って導いてくれた。3巻の終わり、ペンダントが偶然目に入りミュラーを許したシーンで初めて、キルヒアイスを失ったあとのラインハルトの心の動きみたいなものが見えたんですよね。それまで彼が何を感じてるのかすらよくわからなかったから。だからあのシーンはすごく印象深い。

でもすべてが「キルヒアイスならこう言うはずだ」で決められるわけではなく、基本的には皇帝という立場は孤独なもので、何を決めるのも最終的には彼一人の責任だし、その決断や結果に対して思うところを共有してくれる人は誰もいない。キルヒアイスならそれができたんだろうけど。

ラインハルトの人生という観点では、キルヒ亡き後では5巻のヤンとの戦いがクライマックスだと思う。それが完全な決着を見ずに終わり、誘いをかけたヤンにはふられ、二度目の会見なるかと思いきやヤンが死に「キルヒアイスがいなくなったとき、もうこれで失うものはなにもないと思ったのに……」とラインハルトはつぶやく。作者の徹底ぶりがおそろしい。

キルヒアイスやヤンまで失ったあとは、さすがに寂しくなったのか部下と交流しようとする皇帝。ヒルダさんやエミール君がいてくれてよかった。孤独を感じてはいるけど閉じこもってはいないんですよね。不器用ながらも周囲と関わろうとしている。こういうところが好きです。というか、自分を本当に思ってくれそうな存在を見つけ出すのけっこう得意ですよね。敵が多いから余計、自分の心の味方を敏感に感じ取ってしまうのか。そう思われた側はお応えしなければと心から思ってしまうあたりはさすがラインハルトさま、と思う。

ロイエンタールに謀反を起こされ、地球教から命をおびやかされ、いろいろ危うくなってからは部下の命を心から惜しむし、ミッターマイヤーを戦友と呼び「死ぬなよ」とまで言うように。ここまでラインハルトが精神的に追い詰められるなんて思わなかったから、その必死さがつらいし愛しい。でも、部下に死んでほしくないなら戦いを控えればいいんですよ。戦えば誰か死ぬんだから。でもそれはできないんですよね。戦いに魅入られていて、戦いこそが彼の生きている意味なので。

そんなふうに彼は痛みや矛盾を抱えながらも、できうるかぎりのことをして精一杯最後まで生きてたので、不幸だったとは私は思わないんですよね。キルヒアイスと共にあった頃はもちろん素晴らしく輝いてたけど、いなくなったあとも彼の人生はまた別のいろどりを持ってるし、それを含めて彼の人生の軌跡がとても好きなので。

 

(以上、2017年7月の自分の感想をサルベージしたものです。)