緋綸子の雑記帳

私が誰かのブログを読んで楽しむように、見知らぬ誰かが私の記事を読んでくれたら。

好きな児童文学10選

はてなブログ10周年特別お題「好きな◯◯10選

児童文学とは何をもって言うのか難しいですが、今回は児童書コーナーに置いてあるものと考えて選んでみました。

 

赤毛のアン

何度読んでも日常のエピソードが抜群に面白い。章によってはまるまるアンがしゃべっているだけなのに面白い。ダイアナの親戚のおばあさんの寝ているベッドに二人で飛び乗っちゃって謝りにいく話が好き。けど大人になって読んでみると、手違いでやってきた女の子・アンを返さずに引き取るまでのマリラの逡巡と葛藤や、マシューの死後のアンの進路など、人生の分かれ道の話がしみじみと味わい深い。それぞれ、人生のなかで迷い悩みながら決断していくのですね。

 

若草物語(+続若草物語)』

ひとつひとつのエピソードの面白さは『赤毛のアン』に軍配が上がると思うけど、四人姉妹の書き分け、それぞれにそれぞれらしいエピソードがある登場人物の多彩さは『若草物語』に軍配が上がると思う。そしてローリィ!男性キャラが魅力的なのはまちがいなくこっち。ローリィが唯一情熱的に恋したのはジョーだけど、その前に彼は姉妹の誰にとっても信頼のおける大事な兄弟みたいな存在であるのがよいところ。

 

『第三(第四)若草物語

主人公はナットだと思っている。ナンももちろん魅力的だけど。読者的にはおとなしい少年なんてわんぱく者よりよほど感情移入しやすいのだけど、現実にはおとなしい少年って意外と信頼されにくいのだろうか?濡れ衣を着せられる話はつらかった。

 

ゲド戦記

私にとって初めて読んだ本格ファンタジーかもしれない。文章に満ちる重厚な味わいがよい。第二作の『こわれた腕環』の、物心つく前に“墓所”の巫女として選ばれ、その生き方を唯一のものと思い込み生きているアルハという少女がゲドと出会い変わっていく話がとても好き。

 

二十四の瞳

大石先生が教師になって初めて出会った12人の生徒たち。全員の名前と性格、それぞれがたどった人生を私は覚えている。母をお産で亡くしたあと学校に行けなくなった松江。数年後に大石先生が修学旅行先で、うどん屋で働く松江と再会する場面が印象的。そしてラストの同窓会がとてもよいのだ。生きることの哀しさと喜びが描かれている。戦争で盲目となって戻ってきた磯吉(ソンキ)の手に思い出の一本松の写真が渡されたときの吉次(キッチン)と磯吉の会話がとても好き。

 

坊っちゃん

ユーモアのセンスがすばらしい。思い切ってギャグセンスと言ってもよいかもしれない。子供でも夏目漱石の文章を味わえるのがすごいことだと思う(というか、夏目漱石の文章のなかでも群をぬいて良い気がする。単に私の好みかもしれないが)。坊っちゃんは松山にきても清(と食べ物)のことしか考えていないし、坊っちゃんが松山にきて一番楽しそうなのは下宿の婆さんと話しているとき。

 

次郎物語

中学生のときに何とか意地で完読した大長編。正直、難しかった。子供時代の次郎の、兄や弟とくらべて母や祖母に愛されない苦しさが中学時代の私にはしんどかった。本当の意味で善く生きるとはどういうことだろうと考えさせられる。

 

シャーロック・ホームズの冒険

大人になってから読んだ。探偵が主人公で助手がいて事件があるんだけど、ミステリーや推理がメインではないように思う。依頼人の人物が味わい深く、人物のセリフも地の文も語り口が心地よい。

 

精霊の守り人

大人になってから読んだ。本編全10冊を読むと、少年チャグムの聡明さと成長を存分に味わえる。バルサがチャグムと自分の関係をとおして、かつて自分を育ててくれたジグロのことを理解できるようになる話が好き。

 

山椒大夫

悲惨な運命のもと、幼い姉弟がけなげに支え合う姿が淡々とした文章で書かれる。私が美しいと感じるものの原点というか。『鬼滅の刃』の第一話のカラー表紙の炭治郎と禰豆子を連想する。その炭治郎はよく見かける笑顔じゃなく覚悟をきめた表情で、禰豆子の表情は儚げでうつろで全体的にほの暗いんだけど、それに通じるものがある。